Like sweetness
海馬邸・・・
 
「くっ・・・何故この俺がこんな事を・・・」
オーブンの前で片膝を付きながら温度設定をしながらボヤイテいる
 
事の始まりはバレンタインデーまで遡る
ホワイトデーに何が欲しいのか遊戯に尋ねると嬉しそうに
「そうだな・・・海馬が手作りしてくれたお菓子が
食べたいぜ」
などと可愛く言われ俺とした事がその表情にコロッとイカレテしまい
 
それ以外の注文をしろ
 
と言うどころか寧ろ
「ほ〜この俺に菓子を作れと言うのか?」
「まさか海馬 お菓子が作れないなんて言わない
だろうな?」
「この俺に不可能な事なんて無い!!」
確かにこの俺に不可能な事なんて無いのだが
まさかお菓子を作る破目に陥ろうとは
実の弟であるモクバにでさえ作ってやった事無いのに・・・
 
まぁ可愛い恋人の為なら仕方が無いだろう
しかも既製品を求めるのでは無く
この俺の手製を求めるのだ喜ばざる得ないだろ
 
一先ずオーブンの設定温度は180度・・・
15〜18分程焼けば「チョコマフィン」が出来上がる
だろう・・・
それ以外に「もも寒天」と「杏仁豆腐」と「アップパイ」
ぐらい用意すればヤツも喜ぶだろう
しかし・・・甘党で無い海馬にしてみれば流石に
甘いもの尽くしは、頭痛の元でしか無いだろう
それでも遊戯の喜ぶ顔見たさにお菓子作りに精を
出していると厨房の外がやや喧しい気がするが・・・
 
 
 
 
厨房の外では
「兄さまがこの中に居るんだろ?」
「はい 居られますが瀬人さまは誰も厨房の中に入れる
なと仰せですので幾ら弟のモクバさまと言えど中にお入れ
する事は出来ません」
磯野と河豚田が厨房の扉の前で陣取っている
兄から絶大な信頼を受けている2人だ
モクバがどんなに駄々をこねようが瀬人からの命令無くば
手小でも動かないだろう
渋々 引き下がるモクバ・・・
自室に戻りカレンダーを見て
 
ああ・・・そうか兄さまは遊戯のために・・・
兄さま遊戯に喜んでもらえるといいね
 
密かに兄の恋を陰ながら応援する弟だった。
 
お菓子が出来上がり後は遊戯を招待するのみとなった
時間を確認すると既に夜中を過ぎており14日になっていた
遊戯が喜ぶ顔見たさに予定していたお菓子以外にも
いろいろと作ってしまい
その為 余計な時間がかかってしまった。
しかし遊戯の為だけに用意されたスィーツ達に満足気
な海馬だったが
どうやって遊戯を呼ぶのか迷っていた
遊戯が来るのを待っている気は更々無い
だが遊戯の都合を考えずに拉致紛いの事をすれば機嫌を損ねかねない
それだけは避けたい
だったらどうすればイイのか?
遊戯相手だと上手く働かない己の脳に苦笑せざる得ない
あんな小さな存在に自分が振り回されるとは全くどうしたものか?
 
だが否なモノでは無い
むしろ気持ちがいいモノだ
 
さぁてどうやって遊戯を招待しようか?
 
 
 
 
数時間後-海馬の私室には機嫌のイイ遊戯の姿が
海馬の手作りスィーツを両手に持ちながら満面の笑み
「海馬の手作りお菓子を食べられるなんて言ってみる
もんだな〜♪」
「俺もまさかこんな機嫌のイイ貴様を見れとは思っても
みなかったぞ
甘ったるい菓子は好かんが・・・・
まぁ作ってみるもんだな」
コーヒーを片手に遊戯の嬉しそうな顔を見ている
 
遊戯の表情に一喜一憂を自分がするなんて
今の自分の心の中は、目の前の甘いスィーツより
更に甘い気持ちで一杯だな
だがそれは不愉快では無く心地良いモノ
 
 
こんな日が年に一回ぐらいあってもイイと思えるから
バレンタインデーもホワイトデー悪く無いと思う
ただし遊戯が居ての事だがな
 
 
 
 
-余談-
「兄さま 何時の間に遊戯を屋敷に連れて来たのかな?」
「それね・・・登校途中のもう一人の僕を見つけ『乗れ』の
一言だったんだよね〜」
「それって・・・」
「うん・・・」
何時のも通りの拉致紛いじゃない!!
でも今日が何の日か遊戯自身知っているから怒られずに
すんだけどね




戻る